第20回日本Awake Surgery学会

会長挨拶

会長 成田 善孝

第20回日本Awake Surgery学会

会長 成田 善孝

(国立がん研究センター 中央病院 脳脊髄腫瘍科 科長)

日本Awake surgery学会は、2003年に嘉山孝正先生が開催された日本Awake Surgery研究会をもとに発展し、施設認定講習会などawake surgeryの普及に貢献してきました。今回記念すべき第20回の学術集会を主催させていただくこととなりましたが、学術集会のテーマは「To go or Not to go -Awake surgery 20年の検証―」としました。

この20年に本学会は世界に先駆けて、Awake surgeryガイドラインを出版し、2021年に改訂ガイドラインが公表されました。新しいガイドラインでは、awake surgeryを行う前のインフォームドコンセントについて、「覚醒下手術の目的、方法、摘出範囲、そして起こりうる合併症を説明する。また、覚醒下手術 が続行不可能になった場合を想定し、全身麻酔への移行含めた方針を検討し手術説明を行い、患者から同意を得る。」ことを明文化し、「症状が出現した場合には、これまでに得られた知識・所見等から妥当と考えられる範囲で摘出を続行する」ことが明文化されました。Awake surgeryの目的は神経症状を悪化させずに最大限の摘出を行うMaximal safe resectionですが、昨今の学会発表をみていると、「術中マッピングで症状は出たが、摘出をすすめて全摘出できた。」という発表も少なくありません。SMAのように症状が回復する例もありますが、摘出によって症状が回復しない例もあるようで、awake surgeryの目的・合併症・術中に症状が出た場合の回復の見込みなどについて、術前のインフォームドコンセントがとても重要であると考えます。本学会の技術講習会などによって、awake surgeryの手順についてはほぼ成熟してきましたが、術中マッピング・摘出によって症状がでた場合、どこまでの症状が回復するのか・どこまで摘出してよいのかどうかについては不明な点も多い。第20回学術集会では、マッピングによって症状が出た場合は手術を中止すべきかどうかについて議論し、awake surgeryにおける症状の回復や脳の可塑性について焦点をあてて、活発な議論が行われることを期待しています。

2021年8月